flowers 春 感想

 

FLOWERS 四季 - Switch

FLOWERS 四季 - Switch

  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: Video Game
 

 

移植版且つ完全版となる本作は春/夏/秋/冬を表題とする4部作構成。今回は1作目となる春についての感想、各種エンディングは確認済み、ネタバレ有。

 

 

まず本作のテーマとなる部分は「少女達の成長、友情、そして純愛」という部分。

男子禁制、全寮制のミッションスクールが舞台となり、主な登場人物は女性のみ。一応立ち絵無しで登場人物の記憶の中にいる父親や兄のような男性は存在するが、それさえも話の根幹に関わってくることは少なく、女性のみの隔絶された世界と言って問題ない。

 

・気になった点

「女性のみの世界」なんて知る由もない自分には、登場人物の行動や思考、そのどれを取っても予想外というか、理解に苦しむものが多数見受けられた。

一例として、本作(春)は作中で4月-6月の3ヶ月間しか描かれていないが、この短い期間の中で主人公とそのルームメイト2名の計3名は幾度となく仲違いを起こす。といっても、気弱で超がつくお人好しの主人公が相手を嫌悪するということは無く、そのどれもが他の登場人物のちょっとした勘違いや悪意から引き起こされるものだ。

中には"主人公が恋愛感情を抱いている"ルームメイトAの秘密を、偶然聞いていた"主人公に恋愛感情を抱く"ルームメイトBが知ってしまい、Bが主人公に対して「Aの秘密を皆にバラされたくなければ自分と付き合え」と脅迫するという主人公からすればどう考えてもトウラマまっしぐらの行動を取られることもある。

しかし、そんなことが起きても尚、話の最後には主人公とAは交際し、2名とBは和解している。それは自分からすれば本当に理解の及ばないことで、何食わぬ顔をして主人公達と共に過ごすBを見る度にやるせない感情になる。こういった感情を抱くのがBに対してだけであれば単純に自分の好みの問題なのだろうが、主な登場人物9名の内4名(佐々木姉妹、小御門先輩)に対しては殆ど同一の感情を抱いており、終盤は正直感動ではなく辛さ、しんどさから来る溜息が零れていた。

また、多くの人が指摘している推理パートの難易度の高さも少し気になった。難易度が高いというのも適切な表現では無く、あまりに専門的な知識を要求されることから、作中の文章のみから推理出来るような内容では無いように感じたという意味合いで。まあ消去法でいずれ正解には辿り着くことから自分はさほど嫌な要素では無かったが、もう少しやりようがあった様には思う為残念な点に思えた。

 

・気に入った点

ここまで文句ばかり挙げて来たが、裏を返せばそれはこの作品がそれだけ良く出来ているということでもある。登場人物となる少女達・・・女性の思考や発言、行動といった人物を構成する要素は本当に正確な「女性」を描いているように思えて、それ故に上記のような苦手意識を持ったのだとも思うし、連作の1部作目とはいえその不気味なまでのリアルさに引き込まれたという部分が無ければ最後までプレイすることも無かった。

また、攻略可能なヒロインがルームメイトの2名のみであることから、選択肢分岐が完全な二択になっている(正直選択肢だけを見ると対になっていないように思うものもある)のもプレイする上で分かりやすく、良い点であるように思う。ルームメイト2名が関与しない選択肢に関してはそれらと近い関係性にある双子の姉妹、会長と副会長らをそれらに置き換えるというのも妥当且つ良い点。

音楽及びイラストやキャラデザといった面も主人公である白羽蘇芳の持つ儚さのような部分がより強調されるものに感じ、彼女が主人公である本作にはとても親和性の高いものだと思った。

 

・蘇芳

個人的に本作のキャラクターが持つ唯一の共通点である「女性」の部分を最も感じなかったキャラクター。

厳密には女性らしさが無いと感じたわけでは無いが、あまりにも理想的な、お話の中の「美少女」である彼女を、本当の意味で女性らしいと感じることは無かった。しかしながら、作り物の美少女である彼女によく似た存在を今までも見てきたような、そんな感覚があり、とても感情移入しやすかった。

彼女が抱く感情は多くが違和感の無いものに思えたが、幾度と無く迷惑をかける佐々木姉妹/通報されて然るべきの立花を許したこと、各種EDでマユリと立花に向けた感情、これらに関しては違和感が残る。マユリに向けた感情の答えは2部以降で見えて来るものだと思う為、楽しみな点。

 

・マユリ

親しい知人ではあるが、友達では無い。作中で発したこの言葉に今の彼女の人間性が集約されているように見えた。

人とのコミュニケーションが得意でありながら、必要以上にコミュニケーションを取ることをどこか恐れているような繊細さの垣間見えるキャラクター。好みのキャラクターではあるが、再三発生する問題を解決した後に何も言わず去る展開には流石に呆れた。

 

・立花

自分の苦手な女性の部分を全て詰め込まれたキャラクター。後述の佐々木姉妹と同様に思慮や配慮が足りず先走った言動や行動に出る場面が多く、感情的になってしまい周囲との関係を簡単に壊してしまう姿に恐怖を感じた。

生真面目で短絡的な姿が自分の記憶の中の母に重なり、作中で最も苦手なキャラクターになってしまった。それが女性らしさとも言えるとは思う為、本当に良く出来たキャラクターだなという感想。

 

・えりか

登場した際はその行動の身勝手さから苦手意識を持っていたが、話が進むにつれ作中屈指の年相応且つ繊細なキャラクターであるように思えた。

頻繁に行う自虐や人との距離感、人嫌いを自称し常に攻撃的とも取れる物言い、これらは傷付くことを極度に恐れているが故の予防線であり、その臆病さが魅力のキャラクターだと思う。

目まぐるしく人間関係の変わる少女達の閉鎖的な世界では、主人公である蘇芳の味方も目まぐるしく変わり、本当の意味で終始味方だったのはえりかだけだった。えりかを気に入った理由としてはこれも大きな要因。

 

・佐々木姉妹
学生時代クラスに一人はいる声がデカくてウザい女子を想起させるキャラクター、しかも双子であり常に二人セットで、性格に違いはあれど本質的には同一人物。

自分としては気に入る要素が無く、減点を続けていったらマイナスまで行ったキャラクター。立花に関してはこの先評価が変わる可能性はあるが、佐々木姉妹はこの先も決して好きにはならないだろう。

 

ネリネ

話に絡むことの少なさからあまり印象に残っていないが、蘇芳に対して執拗に伴奏を頼む一連の流れでかなり印象が悪い。シナリオ的に仕方が無い部分でもあるとは思うので今後に期待。

 

・譲葉

同じく印象に残っていない。達観し過ぎている節があるとは思い、彼女の視点から見た世界が気になるキャラクター。

 

バスキア

アミティエ面談の際にアミティエの目の前でどちらと仲が良いか聞くシーンがあり、流石にそれは教育委員会モノだろと思ってしまった。まあ概ね模範的なミッションスクールの教員・・・というか聖職者だなという感想。これは作中でも触れられていた。